いつか失ってしまうかもしれないのに、
それでも人はなぜ恋をしてしまうの。
*掲載中
・第1話~第10話
・おまけ 3話
第1話 季節日記
たとえば、あの時、
ああいう行動をしていなかったら
今の私はどうしていたんだろう。
+
本を読むと、心が安らぐ。
今年の夏休みは、50冊。
去年は、受験生だったから、30冊に終わってしまったけど、
今年は、50冊安易にこなせてしまうだろう。
私には付き合っている人がいる。
中学1年生のときから。
夏休みで、3年目を迎える。
だからといって、私たちには恋人らしい雰囲気もなく、
かといって友達という感じもない。
「みさ!」
彼のきれいな声が私をよんだ。
男の子らしいちょっと低い声。
でも、私を呼ぶその声は、いつも透いて聞こえてしまう。
「わるい、遅くなって!
行こうぜ、ほらチケット。」
久しぶりに会った彼氏。
1か月ぶりのデート。
こういう時、女の子はどういう表情をするんだろう。
にこっと笑って、天使みたいな顔をむけるんだろうか。
はたまた、うるうると会えた喜びから泣いてしまうんだろうか。
今の私は、
きっと普通の顔だ。
恋をしてる女の子の顔じゃないはずだ。
第2話 混合色
「ほんとごめん。」
彼が泣く、泣く。
「もういいから。」
ちょっと青とオレンジの私。
本当は分かってた、気づかないふりをしてた。
彼を苦しめていたのは、勉強でも部活でも友達でもなく、きっと私。
「バイバイ。元気で!」
私の中に、オレンジがあふれて、すぐに青になる。
最後は笑顔で、女の子みたいにうまく笑えた?
君との長い、夏の終わりのこと。
第3話 季節折り柄
葉に色がつく。
「おーい、誰かペンキ持ってないー?」
「ないー!
もう、全部使っちゃったみたい!」
「まじかー。。
みさ!買い出し行ってきてくれる?」
文化祭委員のちかこちゃんが私に声をかける。
メモをもって私は出かける。
すたすたと。
ひたひたと。
「柏木さん!俺も行くよ。」
「森崎君、ありがと。」
靴に履き替える。
「もう紅葉が真っ赤だねー!
真っ赤すぎて、ちょっと気味悪いだし!」
ちょっぴり頬が赤い森崎君が言う。
「みさ、今度紅葉見に行こうな!」
同じ言葉を君が言う。
笑いながら君が言う。
森崎君じゃない。心の中にいるあの人が。
ああ、私、あの人のこと好きだったんだ。
本当に愛してたんだ。
今更、気づいてしまった。
「柏木さん、どうしたの!」
うずくまる私。
止まらないしずく。
君なら、どうしてくれたかな。
頭をなででくれた?
抱きしめてくれた?
起き上がらせてくれた?
もうわたしは今の君を知らない。
第3話 溶ける
真っ白な金平糖が降ってくる。
地面についたら最後、とけてなくなってしまうのだけれど。
「ちかこちゃん、ごめん、先に帰るね!」
「うん、わかった!
また明日ね!」
最近ちかこちゃんは、隣のクラスの前田くんと付き合い始めた。
クリスマスが近づき、付き合い始める人が多い。
恋っていいなーって思うけど、
どうせ終わって、こんな思いをしてしまうのなら、もう恋はしたくない。
それでもいいなーって思う私は、本当にばかだ。
あの人の顔を思い浮かべてしまう私は、もっとばかだ。
ちかこちゃんはきっと今日、前田君と帰る。
邪魔しちゃ悪いから、
でもやっぱりちょっぴり寂しい。
世界で独りぼっちは私だけみたいだ。
「柏木さん!」
後ろから誰かが駆けてくる音がする。
「あれ、森崎君、今日部活は?」
「今日は休みなんだ。一緒に帰ってもいいかな…?」
森崎君の顔は、いつも赤い。
トマトみたいな感じ。
「うん、いいよ。」
にこって笑うその顔は、やっぱりあの人とは違う。
+
「じゃぁ、また明日ね。」
「うん、今日はありがとう、柏木さん!」
たわいもない話をして、たわいもなく別れて。
金平糖が激しくなる。
あの人に近づこうとしたら、もっと離れてしまった。
私は金平糖。
近づいたら溶けてしまう。
第4話 春夏秋冬
桃色のマフラーを買った。
一緒に帰ってた時にしてたマフラーをしたくなくて。
君が知らない物を増やして苦しめたくて。
苦しむわけがないのに。
だって答えはそうだから。
あれから3か月。
だいぶ気持ちは落ち着いてきた。
なのにね、やっぱりね。
君が頭にいるんだよ。
+
睡魔が僕を襲ってくる。
瞼に重りがのしかかってくる。
古典の授業で尚更。
窓側の君を見る。
浮かない顔。
彼を思い出しているんだろうか。
君をいろんな色にころころ変えてしまう
彼は、どんな人なんだろう。
でも彼と彼女は、もうさようなら。
見たことない彼が、どんなに素敵な人でどんなにかっこよくて、
どんなに性格がよいのか知らないけど、
君を思う気持ちだけは、負けてたまるか。
「じゃぁここを森崎、読んでくれー!」
「え!え!はっはい!」
思わず声が裏返った。
みんなが僕を見て笑う。
やべー恥ずかしー。。
「森崎、ちゃんと聞いてろよー。
もういいから、岩部、代りに。」
「はい、紅色の頬を~……。」
席に着いて、彼女をちらりと見た。
僕も君の色変えれたみたい。
第5話 終わりかけの
久しぶり。
18時47分。
ピンポーンって音と共に、携帯に表示された。
慌てて一度携帯の電源を落とす。
連絡来たらな…って思ってたのに、いざ来たら困ってた。
おかしいかな、おかしいね。
電源をもう一度つけて。
トイレを済ませてきて。
お風呂に入って。
髪を乾かして。
10分待って。
今、19時35分。
画面を開いて、
久しぶりだね。
同じ言葉を繰り返す。
そこからは、風邪ひいてないー?とか
勉強どうー?とか。
あたしばっかり喋ってるところは、あの頃と同じ。
でも彼の言葉は、私にじーんと響いてきた。
「うん」とか、「がんばってるよ」とか相変わらずの内容なのに。
それでもなんでじーんってきちゃうんだろう。
なぜ?なぜなんだろうね。
日付をまたぎ、メッセージを送ってから10分。
寝ちゃったみたい。
ピンポーン
と思ったら、起きてた。
もう寝る?
ううん、そっちはもう寝るー?
いいや、もう少ししゃべってたいかも。。
ちょっと今楽しいから。
……え?
第6話 誠?
ふざけないでよ。
もう私たち別れたんだよ。
今更そんなこといって、私の心かき乱さないでよ。
もう、やめて。
ごめん、もう連絡とるのやめよう。
あなたは取りたいかもしれないけど、私はやっぱり無理。
私たちはもう友達だけど、少しの間は、やっぱり距離置かせて。
じゃないと私も、気持ち整理つかないの。
あなたはもうあたしのこと嫌いなんでしょう?
だったらあたしにもそうさせて。
もうあなたのこと忘れさせてよ。
そっか。
うん、ありがと。
あーあー。
心と離れたこと言っちゃった。
もうやめたいのに。
こんなことしあうのも、もうすべて、全部。
なのに本音を君に言えないのは、
まだ私が君のこと好きな証。
君が振り返ってくれるのをどこかで願ってる
願ってしまってる。
第7話 ガールズ×トーク
「何それ、信じられない!
別れて正解だよ!本当に!
もう別れて正解!」
「同じこと言っちゃってるよー、ちかこ。」
今日は、ちかことブレイクタイム。
笑いながら恋愛を語りあえる唯一の時間。
一人で考えても、心は腐る一方だ。
「でもさー、なんか男ってよくわからないよね。
本当に。」
ちかこが言う。
「結局男って体しか見てないんだろうね。
私、最近男信じれなくなってきたよ。」
最近、前田君と喧嘩したらしい。
目にうっすら涙をためて言うちかこは、私と同じ。
悩んでいることは違っても、きっとみんなどこかで泣いているんだ。
でも今の私は、
そんな彼女の姿がうらやましくって仕方がない。
まだ好きな人と繋がっているのだから。
「今日はありがと、ちかこ。
元気出たよ。」
「こちらこそありがと。
またなんかあったら言うんだよ!」
私は微笑んだ。
「あ、みさ。
もう当分恋はしないって言ったけど、
恋を忘れようと思ったら、また新しい恋をすべきだよ。
森崎君、みさのこと気になってるみたいだよ?」
「えっ?そう…なんだ。
うん、わかった、ちょっと考えてみるよ。」
「うん!じゃぁまたね!」
15分ほど駅から歩いて、家に着く。
「ただいま~」
「おかえり~」
お母さんの声が返ってくる。
階段をのぼる。
のぼる。
のぼる。
ベッドに転がる。
一息をつく。
ふう~。
こんな感じに。
「森崎君。」
そうつぶやいた私の頭には、彼の姿が思い浮かんだ。
森崎君じゃない、彼の姿が。
「いつになったら、このループから抜け出せるの?」
そのまま私は眠りについた。
第8話 なのに心にいる。
そして、3か月がたった。
「なんかさークラスの男子ってなんで、あんなデリカシーないんだろうね。
対して顔もよくないくせに、ほんとよくわかんないや!」
ちかこは最近、男子の愚痴ばかり。
彼氏とは相変わらず喧嘩ばかりみたいだけど、でも仲良くやっているらしい。
今日もマスバーガーでガールズトーク。
「みさは最近どうなの?」
「んー、、ちょっと気になる人がいる…かも。。」
「え!?
まじ!?森崎君とか!?」
「違うよー、森崎君とは友達。
ちかこ前、森崎君が私のこと気になってるって言ってたけど、
あたしたち全然そんな仲じゃないからね!」
「えー、何言ってんの、そうなんだから、絶対!
で、誰なのー?」
「えー?」
私は笑う。
心から。
「岡本くん…かな。」
「岡本くんね、はいはい!
どうゆうところが気に入ったの?」
「なんていうか、男子って女子のこと悪くいったりするけど、
そういうの全然言わないし、面白いし。。
そういうところに惹かれちゃったんだよね……。」
照れ隠しのためにさっき買ったシェイクを飲んだ。
そばに岡本君がいないかと、思わずあたりを見回してしまう。
いなくて、少しがっかり、少し安堵…みたいな、、
「まぁ確かにね、いいとは思うけどー。
あたしは森崎君派だから!」
ちかこは微笑んだ。
そして、家に帰宅。
疲れているからそのままお風呂に入った。
ゆっくり湯船につかる。
「ふぅ~」
こんな風に。
頭に浮かんだのは二人の男性。
一人は岡本君。
明日は話せるかなーとか、そんな感じ。
もう一人は、消えそうで消えないあの人だった。
おまけ
「みさ、ごめん、あのこと全部嘘なんだ。
お互いのことを考えたら、別れた方がいんじゃないかって……。」
「うん、大丈夫。
ありがと、ありがと。。
大好きだよ……。」
ピピピピー
「はっ!」
私の目の前に真っ白な一面が広がる。
「天井だよってね。」
復縁する夢なんて、本当に最悪だ。
夢だなんて、もっと最悪だ。
<元カレside.>
「……さ。」
目が覚める。
同じ夢を何度も見る。
何度も、何度も。
決まって、おなじ娘が泣いている。
「何やってんだ――。」
布団を勢いよく被った。
<森崎side.>
「みさ、一緒に帰ろう。」
「もちろん!
今日は何かあったー?」
「そうだねー。
みさと一緒に帰れた。」
「……なんつってね!」
俺は布団から出た。
それぞれの見ている夢。
みんなが幸せになれる方向は、あるのだろうか。
第9話 明日へと動き出す
席替えがあった。
岡本君が隣になった。
彼はクラスで一番おもしろくて、楽しくて、笑顔が多くて、
すっごく素敵な人。
次第に話す回数も多くなり、今では毎日話すことができる。
彼と話している間は、もう一人の彼のことは忘れられて。
そんな風になれたせいかな、、
もうあの人のことは……
元カレのことは、
今ではすっかり頭から消えた過去の人になれた。
結局彼とはクラスが離れてしまって、
かなわぬ恋だったけど、でも、本当に彼には感謝してる。
本当に。
私が卒業式の日、彼にそのことを伝えたとき、
彼はちょっとびっくりしながらも、
「よかった。」
そう言って、またあの笑顔で微笑んでくれた。
彼は、私にとってのヒーロー。
内緒だけどね!
2年生になってから、私は森崎君に告白された。
「好きだったんだ。
彼のことが忘れられてないと思うけど、
俺が忘れさせるから、付き合ってください。」
彼はお得意の真っ赤なトマトで、そう言ってくれた。
「私、もう元カレのことは、好きじゃないよ。」
「え?」
「でもごめん。。
私、岡本君のことが好きで、、叶わないってわかってるんだけど、
やっぱり彼に惹かれちゃうんだ。。
でも、元カレのことを忘れられたのは、森崎君のおかげでもあるから。
フラれたばかりの時、話しかけてくれてありがとう。
本当にありがたかったんだ。」
「うん、そっか。
うん。
フラれたのは残念だけど、この一年俺が柏木さんの力になれてたんだったら、それでいいや!
ありがとう、そのこと教えてくれて。
これからも応援してるから。
一緒に頑張ろうね。」
森崎君は、赤いトマトをキラキラ実らせながら、私にそういった。
私は差し出された手を、しっかり握った。
しっかり。
元彼から連絡を取るのは、年に数回程度。
それも日常的会話。
前は、なんでこんなことしてんだろ、って思ってたけど、
もうそれもどうでもいいくらいに思えて。
彼はどう思ってるのかやっぱりわからないけど。
でも私は今思う。
彼と付き合えて、別れてよかったと。
「ちかこ、ほら写真みんなで撮るよ!」
「はーい!」
私が今、とびっきりの笑顔で笑うことができるのは、
森崎君、岡本君、ちかこ、家族、先生、クラスのみんな、
そして、元彼。
みんなに感謝しながら、
私はここ桜ヶ丘高校を卒業するんだ。
桜が舞う中を。
第10話 決意
卒業してから、中学の同級生と行う同窓会があった。
もちろん別れてから、元カレに初めて会う。
ちょっぴり緊張はするけれども、やっぱりもう友達として見ることができると思う。
「久しぶりー!
元気だったー!?」
「髪、のびてるー!
ちょっと大人びてるし、ばかみたい(笑)!」
みんながみんな、少し成長した姿を笑いあいながら、
会えなかった日々の思い出を語り合う。
「みさー!」
「なぎちん!!」
「きゃ!元気だったの!?
連絡はとってたけど、しばらく会えてないからさ!」
なぎちんとは、中学の時の一番の友達。
遊ぶこともあったけど、
ここ一年はお互い進路で精一杯で、遊ぶこともできなかった。
すっかり変わった彼女の姿を見て、少し寂しい気持ちを覚えつつも、
やっぱりどこか嬉しい。
彼女とは幸いにも同じ大学。
「これからはもっと遊ぼうねー!」
彼女の笑顔が大好きだ。
「ねぇ、りつきと会った?
あそこいるよ?」
遠くで彼が笑っていた。
「あー、別れてから会ってないんだよねー。」
彼を少し見つめていると、彼がこちらに気づき、歩いてきた。
「ちょっと私、ご飯とってくるね。」
「ごめんね、ありがと。」
なぎちんは、笑顔でごはんを取りに行った。
同窓員の友達が用意してくれたこの広い会場には、豪勢なご飯が机の上に、広げられているのだ。
手にグラスを持ちながら、彼はあのころと変わった顔で、
こう言ってきた。
「久しぶり。元気してた?」
あの頃と変わった私は、こう返す。
「うん、してたよ。
ちょっと大きくなったね。
ちゃん大人になってんじゃん?」
「なってるわ。」
お互い思わず笑ってしまった。
「りつは、どこ行くんだっけ?」
「広島。」
「そうそう、近いんだよね!
これからはよく会うかもだね。」
私が微笑むと、少し大人になった彼が笑ってくれた。
私が通う大学も広島で、ここ地元とは少し離れてしまう。
何の意味もない友達としての意味の、「よく会うかもだね」になんだか不思議を感じた。
あの頃と少しよく喋るようになった私と、
ちょっぴり無口になった彼と。
あんなに悩まされていた存在の人と、今こうして自然に喋れてるなんて、本当人生分からない。
「なんか、不思議だよなー、
俺ら。」
「まあねー、
前までは付き合ってて、別れて。
こうして今、しゃべってるんだもんね。」
「ほんとだよなー」
私は思わず笑ってしまう。
「フラれた直後なんか、もーあたしやばかったからね!
本当、男嫌いの激しさよ!
笑えちゃうわー!」
「や、ほんとごめんなー。」
「ちがう、違う嫌味とかじゃなくて!
いつかこうして話してみたかったんだよね。
あんなに悲しかった日々も、こうして共有したかったの。」
りつきと別れて、私はいろんなことを学んだ。
別れたばかりの時は、
出会うカップルを見ると、どうせいつか…と思ってしまったし、
恋話も苦手になっちゃったし。
失恋ソング聞いて泣いたり、映画見て泣いたり、いっぱい泣いた。
でも今は、こうしてその元カレと笑いあってそのことを話せている。
髪を耳にかける。
「髪、伸びたな。」
「うん、伸びたかもだねー。」
彼に微笑む。
「俺さ、あの時、余裕なくてさ。。」
「うん。」
「環境変わったしさ。」
「うん。」
「でも、今の俺なら、大人になれて、
変われたっつーかさ……。」
「うん。」
「だから……さ。」
「うん。」
「もう一回、俺ら。
その、なんつーか。」
彼の顔がだんだん下がる。
私は顔を上げて言った。
「あ、見て!
修造やっときたよ!
変わってないなー、修造!
ふふふ♪」
りつきの肩を軽く二度叩く。
「ほんとだ、変わってねーや!」
彼は笑う。
私も笑う。
「素敵な恋をしてね、りつき。
もう恋人同士ではないけど、これから先も私にとってあなたは特別だから。」
「……うん、俺もだよ。」
望んでた彼から一番聞きたかった言葉を払いのけて、
私はゼロからまたスタートする。
なぜ人は恋をしてしまうのか。
失恋を経験した私でさえ、それは分からない。
だって、あんなに辛い思いをしたのに、
違う誰かを好きになってしまったのだから。
恋は辛い。
だけど、人を丸く成長させる。
素敵な恋をみながして、幸せになることを私は今願う。
<Fin.>
おまけ①
同窓会の後―…
「りつき、どうだったんだよ、みさは?」
「あー、、だめだった。」
彼女とは2年前に別れた。
一重に俺のわがままだ。
彼女と別れて、いろんな人に出会い、
それなりに片思いもしたけれど俺の心のどこかには、彼女がいた。
俺がふったはずの彼女が。
俺の中で彼女は、常に笑っているイメージ。
でも、おんなじくらいよく泣く。
泣いて泣いて。
怒って怒って。
彼女は、俺を精一杯愛してくれていた素敵な人だった。
あの時、俺がもし忙しくなかったら、
まだ続いていたんだろうか。
あの日、部活がなかったら、まだ続いていたんだろうか。
あの日、俺が寝ていたら、まだ続いていたんだろうか。
あの日、
あの日、
あの日……。
あの日が重なって、俺の中でぐるぐる回る。
「みさ、いい女になったなー。
なったなーじゃねーか。」
「フラれておかしくなったのかよ、りつき。」
「あー、いい女だなぁ、昔から。
あー、あの頃に戻りて―!」
青春は二度と戻らない。
だからこそ、素敵な青春を。
綺麗なアオハルを描いてほしい。
おまけ②
俺たちが入学したころに咲いていた桜が、
見事に再現された。
俺もあの子たち新入生みたいに笑っていたのだろうか。
「あれ、森崎。
柏木にちゃんと挨拶できたのかよー?」
「したよ。
フラれたよ。
てかうっさい!」
「まぁまぁ森崎。落ち着いて。
ほら、後輩。
森崎に用あるみたいだぞ?」
「あー、あの娘か…。」
少し前に告白してきてくれた、1年後輩の女の子。
少しブロンドがかった髪に、肩したまで伸ばした髪が、
柏木みたいで思い出してしまう。
最初は、柏木みたいだからとか、考えてたんだけど、
最近はよくわからない。
よく笑うところとか、たまに怒るところとか。
ころころ変わる彼女の表情が楽しくってしょうがない。
横にいて落ち着くんだ。
なんなく、なんとなくだけど。
「森崎も隅におけねーぜ。」
森崎は彼女のもとへ歩いた。
恋はまわる、まわる。
ぐるぐると。
おまけ③ ちかこ
付き合っていた人とこの間、お別れをした。
入試でお互いばたばたしてて、
それですれ違ってしまったからだ。
大学も同じところではないし、
今別れておくのが正解なんだと、私はこの数か月の間言い聞かせてきた。
でもやっぱり、あきらめることができない気持ちが、どこかに潜んでる。
様子をうかがうように。
私の中で。
「ちかこ、ほら、写真撮るよ!
卒業の記念なんだから!」
みさはよく笑うようになった。
最初別れたばかりの時は、どうなることかと思ったけど、本当によかった。
私は、微笑んで彼女のもとへと歩いた。
「ちかこ、ごめん!
体育館にカメラ忘れてきたみたいだ!
ちょっととってくる!」
「おー大丈夫なん?
一緒に行こうか?」
「大丈夫!
ごめん、ちょっと待ってて!」
みさはそういって、駆けて行った。
すると直後に
「ちかこ。
卒業おめでと。」
「……智也。
ありがと。」
振り返ったところに彼がいた。
そう彼がいたのだ。
「あの、さ。
俺、大阪、受かったんだ。」
「それで、ちかこは地元だろう?
それで、えっと。
なんていうか、すげー俺の勝手なんだけど、なんつーか。」
私は一度目をつむった。
そして、
「私、4月から、大阪にある学校に通うんだ。
奇遇だね。」
「え?」
「ほら、あたしにまた勉強教えてくれるんでしょ?」
男の人の涙は、
どんなものにも負けないと、このとき思った。
あとがき
私がいなくなった。
をご覧いただき、ありがとうございました。
今回のお話は、失恋がテーマで、
主人公はもちろん、森崎君、ちかこ、元カレなどなど
様々な人が失恋を一度は体験します。
別れる理由は、そのカップルそれぞれ。
思いが強かったほど、その別れは悲しいものになります。
本編では、主人公みさが、
長年付き合っていた元カレと失恋し、
引きずりながらも、成長していく様子をえがいています。
恋は、本当に素敵なものです。
まわりめぐって、あなたに良い縁がめぐってきますように。
そんなことを願いつつ、あとがきとさせていただきます。
ありがとうございました!
2014.02.26